エクラン・オート・ルート Haute Route des Ecrins
1日目 6月26日 晴れ エールフロワド Ailefroide 〜 セレ小屋 Refuge du Sélé
出発地点と到着地点 | 標高 | 所要時間 |
エールフロワド Ailefroide | 1498m | - |
セレ小屋 Refuge du Sélé | 2511m | 3時間 |
フランスの長い冬が終わり春になってもなかなか暖かくならず、ようやく気温が日中20度を越え始めたのはここ1週間ほどだった。と思っていたのはフランス北部に住む私だけで、電車で10時間かけてエクラン山群の主要都市の1つブリアンソンに降り立った時、南仏ではもうとっくに夏は到来していることを悟った。山道具がぎっしり詰まった重いザックを背負っていることもあり、あまりの暑さに汗が噴き出していた。車窓から山が見えた時よりも、こうして自分が立ち止まって目の前にそそり立つ連峰を見上げた時の方が、山に戻って来たんだな、という実感が強く沸いた。 2年前の夏にやはりエクラン山群のピラット峰に登頂した時、そこから見えたエールフロワド峰が忘れられなかった。険しくかなりの高度を持った岩壁とちょうど白いエプロンをまとっているような氷河は、エールフロワド(つめたい翼の意)というよりはどっしりと安定感をもった山だった。そして念願かなって今回経験豊富な男性ザイルパートナー2人と登る機会を得たのだ。 計画では、エールフロワドの村を出発、1日目セレ小屋泊、2日目にエールフロワドに登頂、3日目セレのコルを越えて急斜のピラット氷河を下りピラット小屋へ、4日目にモン・ジオベルネ登頂後タンプル・エクラン小屋へ、5日目にクーリッジに登頂しプレ・ドゥ・マダム・カルル村を経てエールフロワド村に戻る予定だ。 1日目はエールフロワドの小さな村を出発しセレ小屋まで、標高差約1000m、約7kmの行程だ。 11時にエールフロワッドのキャンプ場を出発、登り始めは緩やかで森林地帯を抜けていくため、内心ではほっとした。初日は山道具に加えて5日分の昼食も背負っているためにザックはかなり重いし、今日は気温も高い。なるべくなら少々ローペース気味でコンスタントに足を進めて行きたいと思っていたからだ。ルートは全くの1本道で良く整えられており、上流の氷河が溶けて流れ出した渓流脇を沿って歩くために清涼感があって気持ちがいい。緩やかに標高を上げていくに従って森が終わり、高い木々がなくなり、背の低いハイモミとなり、やがては植物は姿を消して岩と岩にわずかに生息する草が現れ、終いには岩だけの地帯となっていく。 |
キャンプ場から谷の奥を見る セレ小屋は正面の山の右方向 |
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谷の奥へと進む、汗が流れ落ちるほどの快晴 | |
次第に雪渓が現れ、岩の荒涼とした風景に | |
奥のエールフロワド村方面を振り返る 緑の絨毯は遠ざかっている |
1時間ほど昼食のために立ち止まる。こんなに快晴なのに止まった途端に風が冷たく感じフリースを羽織る。 1度の昼食くらいでは荷物は軽くはならず、再び重いザックを背負って、視野に入ってきた崖の上の方にまるでひっかかっているようにちょこんと乗っかっている山小屋を目指して登り始める。 エールフロワド村から標高2200mあたりまでだらだらと登って来た道は、ここから残り300mほど急登となる。岩にはワイヤーが張られており、時には片足を腰まで上げないとよじ登れない箇所もある。そのたびに重いザックがじわじわとのしかかってくる。ようやく小屋の様子が判断できる大きさになってくる頃には道は最後のジグザグ登りに入った。と小屋まであと数十メートルのところでなんと右ひざ内側が攣ってしまう。こんなところが攣るなんて始めての経験だ。皆には先に小屋に行ってもらって一人立ち止まってストレッチを繰り返し、残りの水をがぶ飲みする。水分補給が足りなかったのかな、と明日からの山行がちょっと不安に。 セレ小屋着15時。 |
ようこそ、セレ小屋へ!の看板 最後のジグザグ登りの途中で |
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セレ小屋 | |
小屋からの眺め 3日目に越えるセレのコルが中央に見える |
小屋は広い食堂と外のテラス、トイレットペーパー付きのトイレと鏡付きの洗面台、2段ベットのドミトリー部屋と清潔で快適そうだ。 収容人数は58人だが、まだ6月ということもありこの晩の宿泊客は私達以外に9人のグループと、ガイドを連れた4人、イギリス人の2人だけだった。ここもあと1ヶ月もしたらもっと賑うのだろう。そのせいか日本人の私は珍しいらしく小屋の管理人さんは親しげに話しかけてきてくれる。連れが、彼女は日本から来た山小屋ミシュランで各山小屋に星をつけるんだよ、と冗談で言ったらその時からさらに親切になった。そのお陰かどうかは分からないが、夕食のデザートは美味しいチョコレートケーキをほうばることができた。 明日の朝食は3時半、夜のうちに支度を整えて、ベッドの中で遠くからサッカーワールドカップを中継するラジオ音を微かに聞きながら9時には眠りについた。 |
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